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2014-09-23

「あしたのジョー」の時代

先日見た『「あしたのジョー」の時代』展(練馬区立美術館 9/21終了)から

展示された原画や年表を見ていて、不意にあることを思い出した。
あしたのジョー最終回の号が発売されたあの日。『少年マガジン』を池袋駅で買い、友人Hと一緒に列車内で並んで座り、二人でドキドキしながらむさぼり読んだ。最後のページをめくり、Hが言った。「死んじゃったのか?」。「うーん」と唸った私は、宙づりにされた妙に気だるい気分で、車窓の流れる風景に目をやったのだった。

そつなく過去が整理されたこの手の展覧会は、時代を共有していた者にとって、当時気づかなかったことを教えてくれもするが、懐かしさだけでなく、違和感を感じることもしばしばある。面白い切り口なのだが、無理やり1970年代初頭の気分を祭り上げている感が否めなかったのが正直なところ。まあ、皆それぞれが異なる感覚で、ある時代の空気を受容しているという、当たり前のことを再確認する機会と考えればよいのだろう。

とはいえ、企画者に一つ感謝しなければならないことがあった。あの日が1973420日と同定され、例のラストシーンが私の中である種のトラウマとして身体化されていたことに、あらためて気づかされたのだ。そう、この二週間後、「真っ白になった」のレントゲン写真が発覚し、体重が10キロ以上急減した私は、激しく咳き込みながら緊急入院した。重度の肺結核。あの気だるい気分は、ジョーの結末とともに、ならぬでつながっていた訳だ。
(Facebook 投稿より)

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