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2009-07-23

発想トレーニング

美大受験生40人程を相手に、「発想トレーニング」と称したレクチャーとワークショップをする。
この手のレクチャー、何となくサラリーマン向け「自己啓発セミナー」のような、少々いかがわしい匂いがしないでもない。が、いたって実質的で、表現者を目指す若い人たちに向けてコンパクトにまとめられた内容。

実は、美術教育の中でほとんど真空地帯になっている領域でもある。児童教育はともかく、高校生以降は、「発想の大事さ」つまりオリジナリティーや視点のユニークさなどは取りあげられるものの、制作された作品の結果として語られることが多くなりがちだ。そう、ほとんど個人的体験の中で閉じたまま、曖昧な状態で手つかずの状況なのだ。そしてどうしても教育しやすい技術的修練(もちろんこれは大事だけれど)に収斂しがちになる。あるいは逆に、「もっと自由に」とか「ユニークでいいね」などとあまり根拠のない褒め言葉でまとめられてしまう。

それらをなんとか実際の制作に即して、「発想」が生じ具体化されるまでをプロセスの中できちんと概念的に位置づけること。そしてそれが結果的に方法論や様式といかに密着しているかを体で知る必要がある。特に、制作・表現する側を目指す学生にとっては。
各人独自の方法を見出すのはその後ではないか? 高等教育においては、ある種の規範を知った上で獲得される自由さやユニークさが尊重されるのが望ましい。ちょっと偉そうな物言いだが‥。

十数ページの冊子を準備し、自分の体験や各種の方法論をまとめ、彼ら彼女らが今までほとんど経験してこなかった「発想」の現場をわかりやすく説明、楽しみながらトレーニングしてもらった6時間。感想を聞くと、やはり今までほとんど聞いたりやったことのない内容・アプローチだったので、全般的に好評だった様子。

(旧サイトの「活動記録」より一部抜粋して転載)

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