1998.1
かわさIBM市民文化ギャラリー 川崎
マップケース(引き出しの中に地図、写真など)・ 国道16号線沿いで採取された土砂、石、灰など・
TVモニター2台・ビデオカメラ2台・プロジェクター・その他
(展評)
ビデオが生む内省とユーモア 1998年2月5日 朝日新聞夕刊 田中三蔵
丸山は1956年生れ。身の回りにあるものを集め、並べ直して示す作業などを続けてきたが、今展は、「時間の補習 #5」と題した一点だけを一室全体に展開している。
マップケースを六箱、一列並べた。上にはそれぞれ、土や砂、灰、小石などを置く。引き出しの中には、首都圏各地の地図や、寂しげな風景写真。中央の二つのケースの間に橋を渡すように、「家」の形をした木造の小箱が置いてある。下は空間。何の基盤もなく不安な日常を連想させる。ケースの列の延長上の両端にテレビモニターが一つずつ置いてある。その下にはビデオカメラ。ケースと木の「家」を撮る。一つの画像は二台のモニターにお流れ、もう一つの画像は入り口付近の壁に投影される。鑑賞者の姿も映るのだが、画像はコマ落としのようにぎこちなく、実際の動きよりもごくわずかに遅くなるような仕掛けだ。その「ずれ」が見る者に自分自身を強く意識させる。生態学的にも、経済的にも、家庭内の人間関係でも危険に満ちた生活。そのことに気づくのが遅い私たち。そんな多重の内省を迫る。(中略) 丸山作品が促す「見る者の自己相対化」は、「ずれ」という時の刻みのたまものだと気づく。